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神戸地方裁判所 昭和37年(ワ)239号 判決 1964年8月12日

主文

一、被告藤田靖二、同滝原産業株式会社は原告に対し別紙目録(一)記載の家屋を明渡せ。

二、被告藤田津〓子は原告に対し別紙目録(二)記載部分を明渡せ。

三、訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

四、この判決は原告において被告滝原産業株式会社に対しては金一〇万円を、同藤田靖二及び同藤田津〓子に対しては各金五万円を担保に供するときは、夫々仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、

主文同旨の判決を求め、請求原因として、

一、別紙目録(一)記載家屋(以下本件家屋という)はその敷地とともにもと訴外協栄商事株式会社(以下訴外会社という)の所有であつたところ、同訴外会社は昭和二八年九月一日原告に対し本件家屋並びにその敷地につき抵当権を設定し、昭和二八年九月二二日神戸地方法務局兵庫出張所受付第一五、六五九号をもつて右抵当権設定登記をなした。

二、訴外会社は前項の抵当債務の弁済をしなかつたので原告は右抵当権の実行として、神戸地方裁判所に本件家屋並びにその敷地の競売を申立て、同庁昭和三三年(ケ)第一七二号事件として昭和三三年七月八日競売開始決定があり、右競売手続において、原告が本件家屋及びその敷地を競落し、昭和三四年八月二六日原告に対しその競落許可決定があり、原告は本件家屋等の所有権を取得した。

三  (一) 被告藤田靖二は訴外会社との間に使用貸借契約にもとづき本件家屋を占有しているものとみられるが、原告に対してその占有権原を対抗できない。

(二) 被告滝原産業株式会社(以下被告会社という)は本件家屋を占有している。

(三) 被告藤田津〓子は本件家屋の内別紙目録(二)記載部分を占有している。

四、よつて原告は本件家屋の所有権にもとづき被告藤田靖二、被告会社及び被告藤田津〓子に対して前記各占有部分の明渡しを求める。

と述べ、

被告会社、同藤田津〓子の抗弁に対する答弁として、

一、被告会社及び同藤田津〓子の各抗弁事実はいずれも争う。

二、仮りに訴外岡川が訴外会社より、被告らの主張する日時に、本件家屋につきその主張する内容の賃貸借契約を締結し、また被告会社が訴外岡川よりその主張する日時に本件家屋に対する賃借権を譲受け、或いは被告藤田津〓子がその主張する如く本件家屋を訴外岡川、後には被告会社より転借したとしても、訴外会社と訴外岡川との間の本件家屋についての賃貸借は抵当権設定登記後である昭和三三年四月二二日になされた期間の定めのない賃貸借であり、このような賃貸借は民法第三九五条に所謂短期賃貸借にあたらないから、右賃貸借を以て抵当権者に対抗することができないものであり、従つて競落人である原告にも対抗することができない。と述べ、

再抗弁として、

仮りに期間の定めのない賃貸借が民法第三九五条に所謂短期賃貸借と同視でき抵当権者従つて競落人たる原告に対抗できるとしても本件賃貸借は同法第六〇二条所定の三年を既に経過しているのであるから競落人である原告は借家法第一条の二によらず何時にても賃貸借を解約する旨の意思表示をなしうるのであり、原告の本件訴訟提起は解約申入の意思表示を包含するのであるから本件訴訟提起より六ケ月を経過することにより本件賃貸借は消滅した。

と述べた。

証拠(省略)

被告藤田靖二は、

原告の請求を棄却する。

との判決を求め、答弁として、

一、原告主張の請求原因第一、二項中本件家屋が競売となり、昭和三四年八月二六日競落許可決定があつたことは認めるが、第三項(一)は争う。

二、被告は原告に対する右競落許可決定に対して即時抗告をなし、その結果、原告が本件家屋の所有権取得登記を得たのは、昭和三六年五月一〇日である。

と述べた。

証拠(省略)

被告会社及び同藤田津〓子訴訟代理人は、

原告の請求を棄却する。訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求め、答弁として、

原告主張の請求原因事実はすべて認める。

抗弁として、

一、本件家屋は昭和三三年四月二二日訴外岡川において本件家屋の元所有者である訴外会社より期間の定めなく且つ賃借人の承諾なく本件賃借権を第三者に譲渡し又は本件家屋を第三者に転貸しうる旨の特約を付して賃借しその引渡しを受け、更に昭和三七年二月二一日被告会社において右特約にもとづき訴外岡川より賃借権の譲渡を受けた。

二、また被告藤田津〓子は訴外岡川から、右特約にもとづき昭和三三年四月二二日本件家屋の内別紙目録(二)記載部分を転借し、その後本件家屋の賃借人が被告会社に替つたので昭和三七年二月二一日更に被告会社より転借した。

三、訴外会社と訴外岡川との間の賃貸借は抵当権設定登記を経由した後の賃貸借であり、期間の定めのない賃貸借ではあるが、民法第六〇二条所定の期間を超えない所謂短期賃貸借と同一にみなさるべきであつて、右特約と共に、民法第三九五条により抵当権者に対抗することができ、従つて被告らは前記賃借権を以て競落人である原告にも対抗できるものである。

と述べ、

再抗弁に対する答弁として、

原告の借家法第一条の二の規定にかかわらず、何時にても解約の申入れをなし得るとの主張は争う。原告が仮りに解約の申入れをなしたとしても、右解約には借家法第一条の二の正当事由が存することが必要であるが、原告の解約申入れには正当な事由があるとはいえない。

と述べた。

証拠(省略)

別紙 物件目録(一)

神戸市須磨区潮見台町三丁目三九番地

家屋番号  同町三九番

一、木造瓦葺二階建居宅 一棟

建坪  三二坪四合

二階  一九坪一合

物件目録(二)

右家屋の内

母屋二階及び離れ階下を除く部分

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